中央協同組合学園校友会

校友会からのお知らせ

JJCセミナー「協同組合と世界的金融危機」に参加しました

校友会副会長 町田重光

 6月1日(月)、JJC(日本協同組合連絡協議会)主催によるセミナーが新JAビルに隣接した日経ビルで開催されました。私が参加したのは、校友会としてではなく、協同組合懇話会の会員としてでしたが、校友会活動に関連することですので、この際、校友会副会長としてセミナーの模様を報告することとしました。

 ICA(国際協同組合同盟)の外国人関係者も多数参加しており、翻訳のイアホーンを耳につけての聴講でした。ICAは、1895年、ロンドンで設立され、世界の農業、消費者、信用、保険、保健、漁業、林業、労働者などあらゆる分野の協同組合の全国組織が加盟していて、現在85カ国、223団体で組合員は8億人を超えるそうです。

 JJCは、農協、生協、漁協、森林組合、労働者共済、労働者協同組合の全国段階の協議体で、現在、日本のICA会員組織であるJA全中、JA全農、JA共済連、農林中金、家の光協会、日本農業新聞、日本生協連、全漁連、全森連、全労済、日本労協連および学生協連の12団体が加盟しているとのことです。

 茂木守JJC委員長・JA全中会長の開会あいさつ、イアン・マクドナルドICA事務総長の基調報告に引き続き、JJC会員団体から報告が行われました。

 最初に、JAグループを代表し、全中・土屋常務が「経済危機下でのJAグループの取り組み」と題して報告を行いました。項目としては(1)厳しさを増した農業・農村情勢とJA経営(2)金融危機で明らかになった市場原理主義の限界(3)金融・経済危機へのJAグループの対応というもので、その要旨は次のようなことでした。

(1)の要旨
1980年代後半以降、GATTウルグアイラウンド、WTO農産物貿易交渉を通じ、輸入自由化の影響を受け、農畜産物の価格低迷、農業所得の減少で農業後継者が激減し、農業従事者の高齢化が進み、農業の維持が困難になった地域も増え、食料自給率も40%に低下した。また、市場原理主義的な政策展開により、都市と地方の格差が拡大し、農村は総じて経済的に落ち込み、農村地域を基盤とするJAの事業と経営は、大きな影響を受けている。

(2)の要旨
昨年来の世界的な金融危機から経済危機に至った経緯は、これまで主張されてきた市場原理主義・グローバリズムに限界があることを示した。市場原理主義のもとで急成長したバブルは崩壊し、社会の格差を拡大し、新たな貧困問題が生じた。そのうえ、世界規模で環境破壊が進むことも明らかになった。

(3)の要旨
農林中金も金融危機の影響を受けたが、会員組合の協力を得て、1兆9,000億円の資本増強を実施し、2009年度から4年間の「経営安定化計画」にもとづき、協同組織中央機関として、一層の機能強化、より安全性の高い商品への投資とリスク管理手法の再構築への取り組みを進めている。

 また、経済危機の影響は信用事業にとどまらず、共済事業や販売・購買事業等JAの事業全般に及ぶことから、JAグループは、組合員および地域との結びつきを一層深めながら経営改革を進める。

 そして、10月に開催する第25回JA全国大会に於いて、農地・担い手対策など組合員間の協同をさらに強くしていくとともに、農産物直売所や食農教育など生産者と消費者を結ぶ取り組みを更に強化し、JAと消費者、地域の商工業者、NPO、行政等と多様な連携・ネットワークを構築し、農業とくらしの両面で新たな協同の力を発揮することにより、この危機を乗り越えていくと述べました。

 そのためには、JA組合員と役職員が協同組合の基本的価値や協同組合原則等について理解を深める学習活動を進めるとともに、地域住民や消費者等にJAを知ってもらう取り組みを強化することが極めて重要であると結んでいます。

 以下、日本生協連、JF全漁連、全労連、全労済、日本労協連、大学生協連からそれぞれ報告がなされましたが、詳細は省略します。

 こうした報告を受けての白石正彦・東京農業大学名誉教授による総括があり、最後に以下の特別決議が行われました。(原文通り)

1.あらためて協同組合の価値を認識し、協同組合原則に則った組織・事業運営を行なう。

2.協同組合の経営に万全を期し、その一層の高度化、効率化を目指すとともに、新しい事業の芽を育てる。

3.地域の人々と協力し、雇用の維持並びに創出、コミュニティーの持続可能な発展に全力を尽くす。

4.協同組合の価値を広く地域住民に伝え、組合員の新規加入と事業の利用・参加・参画を促進する。

5.地域で多様な連携・ネットワークを構築し、新たな協同の輪を広げる。

6.より大きい影響を受ける開発途上国の協同組合に対する協力活動を一層拡充する。

(私の感想)
 行過ぎた自由主義・競争社会は決して幸福な社会ではないことを、国民の多くが実感していると思います。協同組合は、組合員の利益だけでなく、利用者や地域や自然環境のことを考え、将来を見据えた事業を行うものだと思っています。

 経済面や生活面で格差が拡大し、雇用や教育・育児にも深刻な問題が生じている今こそ、自由主義経済の中で協同組合の思想を生かし、誰もが安心して生活できる社会を構築すべきだと思います。

 全中は、10月の農協大会を待つまでもなく、実践に向けてスタートを切ってもらいたいと思いました。